需要の増加
前回はベリー貨物の重要性について見てきました。ベリー貨物の供給減少に加えて、航空貨物の需要増加がさらに供給不足に拍車をかけます。航空貨物需要の増加にはさらに二つの要素が影響しております。
①巣ごもり需要の増加
コロナ禍であなたもAmazonや楽天などのいわゆるE-commerce(Eコマース/電子商取引)の利用が増えたのではないでしょうか。コロナの影響で旅行や外食消費を控える中で、家電や家具、自動車といった消費財の需要が伸びているとのことです。世界的な巣ごもり需要の増加で、こうした製品(部品含む)の輸出入は増加しております。
②海運の混乱と代替としての航空貨物
海運業の混乱が追い打ちをかけております。ご存じの通り、海上貨物輸送は航空ともに国際物流の根幹を支えておりますが、コロナ禍で海運業は大きな混乱に陥っており、供給不全状態になっております。主原因は海上コンテナ不足であり、コロナの影響でトラックドライバー不足が起きたり、港湾でのコンテナ捌きに機能不全が起きており、各国でコンテナが足りない事態になっております。特にアメリカではコンテナ船がコンテナを待った状態で滞留している事象が多発・継続しており、グローバルサプライチェーンにとって大きな問題となっております。
こうした中で、緊急対策として航空貨物輸送が代替として選定されるケースが増えております。極端な例ですと、ニュースになった通り日本のハンバーガー店などでポテトフライが不足するというニュースがネタになっておりましたが、あれも海運の混乱による影響です。主に北米から輸入されるフライドポテト用のジャガイモですが、対応策として一部は航空輸送で運ばれました。単価が低く、嵩張り、消費期限が長いジャガイモなど、海上輸送されるべき品目の代表格でありますが、緊急事態ということで航空貨物便で輸入されたとのことです。このニュースは海外でも扱われ、フライングポテト(Flying potato)とネタにされました。とても単価の高いポテトになってしまいました。
このように海運のサプライチェーンの混乱から、単価が低い品目でさえ、緊急対応として航空貨物便で事態に発展しており、航空貨物需要を押し上げる要因となっております。このほかにも、取り扱いが非常に厳しいコロナ用ワクチンの輸送はほとんど航空便によって行われており、更に需要を増加させております。
こうした状況で、航空貨物単価は史上最高値を記録しており、コロナ前の2~3倍に達するとのことです。航空業界の旅客部門はコロナ禍で悲惨な状況になっておりますが、一方で貨物部門は過去にない大きな収益を上げております。日本の国際貨物航空会社の日本貨物航空(NCA)は、コロナ前までは赤字続きでしたが、コロナ特需に入ってからは黒字を上げており、親会社の日本郵船にとっても海運業と並ぶドル箱部門になっているようです。
また、旅客機を運航する航空会社でも、フレイターを運航する会社は比較的高いレジリエンスを示しております。例えば、多くのフレイターを運航する大韓航空はコロナ禍でも黒字を出す数少ないエアラインです。ANAが2021年度第3四半期で、ようやく営業利益の黒字化を達成しましたが、これは旅客機のみのJALと比較し、ANAはフレイターを保有していることが功を奏したとのことです。かつてはNCAが赤字を計上し、JALは経営破綻後は自社のフレイター運航をやめたように、航空貨物部門は旅客部門と比較し、儲けの少ないセクターでありましたが、今となっては航空会社の生き残りのために欠かせない領域に変貌しました。
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