中国路線推移

航空輸送分析

 日中は歴史や外交問題で対立することは頻繁にありますが、経済的・文化的交流が高密度に行われ、なにより人口規模が大きく、経済力第2位と第4位の国同士であるため、多くの航空輸送が両国間で行われる重要な国となっております。近年はインバウンド需要が大きく、日本における爆買いは中国人観光客が大きく牽引しております。今回は隣国の中国に注目し、日本・国際線就航状況(夏季スケ)ダッシュボードを活用して見ていきましょう。なお、本件では香港も含んでおります。

日中の航空輸送力は旺盛で、日本では主要都市のみならず地方都市からも多くの発着が行われております。またFSCだけではなく、LCCの発着が急増しており、既にコロナ前の2019年の定期便数を超えて回復しており、今後も拡大が見込まれております。

1.エアライン別の傾向

長距離路線と異なり、近距離国際線の中国便のエアラインは多種多様です。主に下記の4種類に分類できます。
 ①日系FSC:JALとANA。特にANAは便数ベースで比較的大きなシェアを有しており、過去10年の合計では第2位のシェアを有しております。しかし近年は中国系エアラインの拡大が急速で、かつ日系はコロナ前の水準まで回復していないことから、中華系と差が広がりつつあります。日本のエアラインはLCCを含め、首都圏と関西からの運航に限定されております。
 ②日系LCC:日本からはピーチアビエーションと日本航空と春秋航空の共同出資会社であるスプリング・ジャパンが就航させております。親会社との関係上、特にスプリング・ジャパンはインバウンド拡大に対応出来ており、コロナ後も拡大傾向にあります。
 ③中国FSC:国土が広い中国からは、実に多くのエアラインが拠点を置く主要都市から日本に就航させております。2025年夏スケ時点の就航エアラインは、便数シェアが多い順から次の通りです。中国東方航空、中国国際航空、中国南方航空、香港航空、深圳航空、厦門航空、上海航空、山東航空、海南航空、四川航空、長竜航空、河北航空、などとなって、メガキャリアのみならず、地方のエアラインも多く日本に乗り入れていることがわかります。
 ④中国LCC:中国系のFSCはLCC並みの運賃を提供することもあるため区別は難しいですが、近年は純LCCの存在感も徐々に増やしつつあります。一方で、韓国系LCCと比較すると、37%程度とまだ比率は少ない状況です。主なエアラインは香港エクスプレス航空、春秋航空、上海吉祥航空、グレーターベイ航空などです。

2.アライアンス別の傾向

 航空アライアンスの比率は次の通りです。まず中国南方航空、中国東方航空、上海航空が所属するスカイチームが18%、ANAと中国国際航空のスターアライアンスもほぼ同じの18%、そして日本航空とキャセイパシフィック航空が所属するワンワールドの12%となっております。中国東方航空はかつてワンワールドでしたが、現在は傘下に収めた上海航空と共にスカイチームに移籍しております。

3.空港別の傾向

 中国側では、便数ベースで上海と香港がそれぞれ30%ほどのシェアを占めております。残り40%は北京、広州、深圳、大連の順に数多くの都市が就航しており、1日1便未満の中国の地方都市からの便も多くあり多様な構成となっております。その他の就航都市は次の通りです。杭州、青島、南京、成都、天津、厦門、福州、無錫、西安、寧波、瀋陽、ハルビン、済南、武漢、重慶、鄭州、石家荘、長春、南通、煙台、海口、合肥、南昌、長沙、昆明。

 日本側は、大阪、成田、羽田、中部、福岡の順でシェアが大きく、近年は大阪のシェアが高まっております。また日本国内の地方都市への就航も多くあり、上海や香港、北京などから地方へダイレクトに運航されており、旺盛なインバウンド需要を中国のエアラインが牽引しております。中国から結ばれる地方都市は次の通りです。那覇、新千歳、仙台、高松、広島、静岡、鹿児島、富山、熊本、小松、茨城、岡山、佐賀、石垣、徳島、米子、新潟、長崎。

5.おわりに

 日系が少なく、中国系が86%のシェアを取っており圧倒している状況です。中国勢にとっては日本路線がドル箱であることがわかります。一方で価格競争が激しく、また過去には歴史問題などで需要の変動も激しく、2025年には日本で夏に大きな災害が起こるという根拠不明な占いの噂によって、一時的に需要が落ちこむという前例がない現象が起きております。日系にとっては積極的な拡大が難しい路線であることがわかります。しかし特に日本の地方路線では中国勢に需要をかっさらわれている状況で、中国のインバウンドが急速に回復・拡大している今、日系の地方からの国際線拡充にも期待したいものです。

Sean

海外で航空輸送のデータ分析業務に関わる筆者が、気のままに航空輸送に関する情報を提供します。

航空業界を目指す就活生、航空株を検討する投資家、航空業界関係者、航空ファン、その他航空輸送に興味ある方々の参考になれば大変幸いです。

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