今回は長距離路線に該当する日欧間の航空定期輸送の状況について、日本・国際線就航状況(夏季スケ)ダッシュボードを活用して見ていきましょう。両地域間は距離は離れているものの、アジアを代表していた日本と大国が集中する欧州の経済的なつながりは強く、重要な路線として見なされ、ビジネス・観光客双方が多く往来しております。近年はウクライナ戦争の影響からロシア・ウクライナ両国の上空を飛行できない状況であり、飛行経路にも影響が出ております。
1.全体の傾向
過去十年ではコロナパンデミックにより大きく減少した後、更にウクライナ戦争が勃発し、追い打ちをかけております。ロシア・ウクライナ両国の上空を飛行できない状況であり、両地域間の運航は大きく迂回する必要が出てきており、飛行時間は大きく伸びたことで、余分な燃料も消費する必要からコストと運賃の上昇に繋がっております。この要因から、欧州路線はコロナ後最も回復が遅れている路線グループとなっております。

2.エアライン別の傾向
短距離国際線と比較して、日欧間の路線では日系エアラインは比較的健闘しており、コロナ後は特に日系の比率が高まっております。2025年時点では4割が日系による運航です。特にANAは欧州路線の開拓を進めており、デュッセルドルフやブリュッセル、近年はウィーン、ミラノ、イスタンブールやストックホルムなど、これまで競合他社があまり運航していない都市へ、提携エアラインのネットワークを活用した積極的な乗り入れが増えております。一方で日本航空は、これまでの伝統的な欧州主要都市(ロンドン、パリ、フランクフルトなど)への運航で現状維持で保守的なネットワークが続いている印象です。
欧州系のエアラインはそれぞれのハブ空港から日本への運航が行われております。東京からの運航に限定している日系と比較して、欧州系は関空や中部などへの運航も行っているところが多くあります。
なお、現在のところ北米便と異なり、長距離LCCの参入はまだありません。シベリア迂回ルートによるコスト増が、影響している可能性があります。

3.アライアンス別の傾向
日欧便でもアライアンス間で熾烈な競争が行われており、ネットワーク形成に重要な影響を及ぼしております。
ANA、ルフトハンザ航空、オーストリア航空、スイス国際航空、ポーランド航空、ITA航空、トルコ航空などが加盟するスターアライアンスが2025年時点で一番比率が多く、40%を占めます。続いてJAL、ブリティシュエアウェイズ、イベリア航空、フィンランド航空などが所属するワンワールドが、36%を占めます。エールフランス、KLMオランダ航空、SASなどが加盟するスカイチームは18%程度を占めております。
ANAはルフトハンザグループ(オーストリア航空、スイス国際航空を含む)と、JALはIAGグループ(BA、イベリア航空、エアリンガス航空)およびフィンランド航空と戦略的パートナーシップを結んでおり、ANAは特にドイツで、JALは特にフィンランドでのシェアを高めております。

4.路線別の傾向
欧州側では多数の就航都市があるものの、高い比率を占めてるのはパリやフランクフルト、ロンドンといったグローバルな主要都市が占めております。また比較的アジアに近いヘルシンキが高い比率を占めております。ANAはルフトハンザ航空との戦略的パートナーシップの影響からドイツへの運航が多くなっております。近年は新都市への就航も相次いでおりましたが、コロナとウクライナ情勢で再開が厳しくなっており、回復は主要都市に集中する傾向にあります。
日本側は、圧倒的に東京からの発着が多く、近年は都心から便利な羽田の比率が高まっております。特に日本のエアラインはヨーロッパ行きの運航は東京圏からに集中しております。一方で欧州系のエアラインは関西や中部からの運航も充実している傾向です。コロナ前はフィンランド航空が福岡や新千歳からの運航も開始するなどインバウンド需要の高まりから地方路線も注目されておりますが、コロナとウクライナ情勢で先行きが不透明となりました。

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