航空貨物、需要減少の兆し

コロナ下の状況で航空貨物、とりわけ国際航空貨物が非常に活況であることを以前の記事でお伝えしました。ところが打って変わって、最近になって航空貨物市場に急転の兆しが見え始めており、需要や貨物単価が減少していくのではないかと見ております。

 昨年9月15日に、米航空貨物大手のフェデックス(FedEx)が来年5月までの1年間の業績見通しを撤回することを発表し、翌16日に同社株価が1日で20%以上の暴落をする事態が発生しました(日本と違ってストップ安がないので恐ろしい・・・)。撤回する原因として、FedExは貨物市況が当初の見込みから激変しており、特に米国国内とアジアやヨーロッパを中心とした貨物需要の低迷の影響を指摘しました。また、他の記事では書かれていないものの、筆者は航空貨物単価の下落がじわじわと航空貨物各社に悪影響を与えているのではないかと考えております。

1)貨物需要の低迷

コロナの影響で最初は沈んだ航空貨物需要ですが、のちにコロナ特有の消費拡大(ネット通販/EC需要やリモートワーク需要)の影響等で航空貨物はコロナ前の状況を超え、非常に活況を見せておりました。航空貨物各社は嬉しい悲鳴を上げて、供給を最大限に増やしました。ところが最近、航空貨物輸送量の減少が目に付くようになりました。

2021年末ごろにピークを付けた後、次第に下落傾向であることがわかります。貨物下落の傾向は空運だけではなく、海運でも起きている状況で、世界的に貨物需要がピークアウトしたと考えられます。

 第一の要因として、コロナ下において各国の経済刺激策により、実は消費経済がかなり良かった状態でありましたが、コロナが落ち着くにつれて消費財の需要が落ち着き、旅行や飲食などのサービスに需要がシフトしている状況であります。

 第二の要因として、中国がゼロコロナ政策を続けており、厳格なロックダウンが続いた影響が、巨大市場の中国経済(需要・生産共に)に悪影響を与えております。

 第三に、インフレによる影響が経済に打撃を与え始めております。エネルギー高や空運を含む輸送費の高騰は、消費に悪影響を与えております。またインフレの打開策として、各国の中央銀行は利上げによる経済冷却を進めており、今後消費に深刻なダメージを与えることは避けられない状況です。

 以上の要因で航空貨物需要は下落傾向を見せており、特に第三の要因は数年にわたる悪影響を与えるリスクがあると筆者はみております(ウクライナ情勢でインフレの状況はまた好転する可能性もありますが)。

2)航空貨物単価の下落

これは貨物需要の下落から直結することですが、航空貨物単価の下落が見え始めております。需要増加とコロナによる欠航による影響で供給が激減したことから、航空貨物単価は高騰しました。以前の記事で書いた通り、旅客機を運航する航空会社は旅客機を使って貨物を運ぶプレイターという運航を実施して、高騰した貨物で稼ぐ状況になったほどです。

 下の図は、大西洋路線(北米=欧州間)の航空貨物運賃を示しております。コロナ前の2019年と比べて、運賃が倍近く高騰していることがわかります。しかし2023年から運賃単価は下落傾向を見せております(それでもまだ依然と比べかなり高いですが)。

価格下落の要因として、主に2点の要因が考えられます。第一に、前述の貨物需要の減少が価格下落に影響しているでしょう。空運だけではなく、海運に関わる海上コンテナ運賃も夏をピークに急落しており、国境をまたぐグローバル貨物需要が落ち込んでいることが見受けられます。今後昨今の利上げなどの世界的な金融引き締めにより景気低迷が起こるとしたら、需要低下による価格低下は長期にわたる可能性も見えてきました。

 第二に、航空貨物輸送の供給増です。特に国際線において、コロナで運休/欠航していた旅客便が急速に復活しつつあります。以前の記事で書いた通り、旅客機は下部にベリーカーゴという貨物を搭載出来、その搭載量は侮れません。既に欧州では大部分の旅客便が復活しましたが、日本や中国を含むアジア地域の国際旅客便はこれから復活が本格化するため、アジア地域における航空貨物単価はこれから下落圧力が高まる可能性があります。

 以上の二点の需給の変化により、ここ数年/数か月で航空貨物の単価は大きく下落(以前の価格方向に戻っていく)可能性がかなりあります。航空貨物需要の減少と単価の低下で、FedExやUPS、日本貨物航空(NCA)など航空貨物をメインに事業を行う企業にとって大きなリスクとなりうるでしょう。

Sean

海外で航空輸送のデータ分析業務に関わる筆者が、気のままに航空輸送に関する情報を提供します。

航空業界を目指す就活生、航空株を検討する投資家、航空業界関係者、航空ファン、その他航空輸送に興味ある方々の参考になれば大変幸いです。

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