韓国路線推移

航空輸送分析

 日韓は歴史問題で対立することは頻繁にありますが、経済的・文化的交流が高密度に行われ、なにより地理的に一番近い国の一つであることから、多くの航空輸送が両国間で行われる重要な国となっております。今回は隣国の韓国に注目し、日本・国際線就航状況(夏季スケ)ダッシュボードを活用して見ていきましょう。

 日韓の航空輸送力は旺盛で、日本では主要都市のみならず地方都市からも多くの発着が行われております。またFSCだけではなく、LCCの発着が急増しており、既に2019年の定期便数を超えて回復しており、今後も旺盛なインバウンド需要から拡大が見込まれております。

1.エアライン別の傾向

 近距離国際線の日韓便のエアラインは多種多様です。主に下記の4種類に分類できます。
 ①日系FSC:JALとANA。両社は共に基本は首都圏からの運航に集中しており、コロナ後は羽田空港からの運航に限定しております。また運航先はソウルに限定しており(コロナ前までは成田~プサン便もあり)、羽田からの運航と言うことで金浦空港だけとなっており、韓国勢と比較してかなり限定的と言えます。運航便数は両社で40便/週にとどまっておりますが(シェア3.1%)、両国の首都圏に近い空港を結んでおりビジネス需要が大きいことから、両社ともワイドボディ機を投入しており、1便当たりの輸送力は比較的大きくなっております。
 ②日系LCC:ピーチアビエーション、AirJapanとZIPAIRがそれぞれ親会社のANAとJALの運航を補う形で運航をしております。関西空港からのピーチアビエーションの便数が多く、加えて現在はZIPAIRの成田便、ピーチアビエーションによる羽田深夜早朝発着枠を活用した羽田便が行われております。両社で42便/週で運航されており(シェア3.2%)、やはり韓国LCC勢と比べて限定的となっております。
 ③韓国FSC:大韓航空とアシアナ航空の2社ですが、両社の合併により2027年をめどにアシアナ航空ブランドは姿を消すと考えられます。首都圏に限定した日系とは大きく異なり、日本の様々な空港から運航を行っております。便数は関空、成田、羽田、福岡、名古屋といった主要空港が多いですが、下記の通り様々な地方空港からも運航を行っており、日本へのインバウンドとアウトバウンドおよび仁川国際線乗り継ぎ需要を積極的に捉えております。韓国側ではソウル(仁川、金浦)のシェアが8割以上を占めておりますが、釜山や済州にも運航を行っております。両社で363便/週運航しており(シェア27.9%)、日系FSCとは桁違いの状況になっております。なお、両社の合併に伴い日韓間でアシアナ航空の福岡便や関西便などのスロットを競争上の観点から他社に譲渡することが定められており、便数は下がることが想定されます。
 ④韓国LCC:は参入が多く多岐にわたっており、更に2種類に細分化できます。第一に韓国FSC系のLCC:大韓航空系ではジンエアー、アシアナ航空系ではエアプサンとエアソウル。大韓・アシアナ両社が合併することから、合わせて統合が進むことが想定されております。第二に独立系LCC:シェアが多い順から済州航空、ティーウェイ航空、イースター航空、エアロK航空、エアプレミア航空、フライカンウォン航空、コリアエクスプレス航空があり、韓系FSCとは資本的に独立したエアラインとなっております。ちなみにエアプレミアはFSCとLCCの中間の価格やサービス設定をするMCCとして定義することもあります(定義は不明確)。このように韓国LCCは乱立状態にあり、過当競争の弊害から今後再編が進む可能性が考えられます。FSCとは異なり、日本側では首都圏以外の地方空港からの発着が多く、関空、福岡、成田、新千歳、那覇の順で便数が多く、主要都市以外の路線も多くあります。韓国側はソウル・仁川が6割ほどを占めており、続いて釜山、大邱、清州、済州、ムアン、ヤンヤンなど、韓国側の地方路線も多いことがわかります。これはフライカンウォン(ヤンヤン)やエアロK(清州)など韓国地方空港を拠点とするLCCがあるからです。韓国LCCは855便/週で運航されております(シェア65.8%)。

2.アライアンス別の傾向

 まずこの路線は無所属のLCCの比率が非常に高く、6割以上に上ります。続いて大韓航空が所属するスカイチームが15%、ANAとアシアナ航空が所属するスターアライアンスが13%、そして日本航空のワンワールドがわずかに1.6%となっております。

3.空港別の傾向

 韓国側はソウルが75%、釜山が18%、残りは他の地方路線が占めております。

 一方で、日本側は多種多様な構成となっており、首都圏以外の比率も大きいことがわかります。特に関空の比率が高く、続いて、成田、福岡、羽田、新千歳と続いていきます。1日1便以下の地方路線数も多くあることがわかります。

4.オープンスカイの影響とLCC

 日本と韓国の間には2013年にオープンスカイ協定が締結され、航空会社は路線や便数、運賃などを自由に設定できるようになりました。これによりLCCの就航が促進され、様々な韓国側のエアラインが就航しており、航空券の価格競争も激化しており、路線によっては日本国内線より安い事態にまでなっております。

 近年の増加分はLCC便の参入・拡大がけん引しており、今後もLCC便が地方路線を中心に増加することが想定されます。一方で、過当競争気味であるため、韓国内においてFSCを巻き込んで業界再編が行われている状況にあり、プレイヤー自体は減る可能性も考えられます。

5.おわりに

 日系が少なく、韓国系が93%のシェアを取っており圧倒している状況です。韓国勢にとっては日本路線がドル箱であることがわかります。一方で競争が激しいため単価が低く、また過去には歴史問題などで需要の変動も激しく、日系にとっては積極的な拡大が難しい路線であることがわかります。しかし特に日本の地方路線では韓国勢に需要をかっさらわれている状況で、韓国のインバウンドが急速に回復・拡大している今、日系も地方空港からの国際線拡充にも期待したいものです。

Sean

海外で航空輸送のデータ分析業務に関わる筆者が、気のままに航空輸送に関する情報を提供します。

航空業界を目指す就活生、航空株を検討する投資家、航空業界関係者、航空ファン、その他航空輸送に興味ある方々の参考になれば大変幸いです。

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