まず初めに、日本にとって経済的にも政治的にも重要なアメリカ合衆国(米国)への定期便の推移を日本・国際線就航状況(夏季スケ)ダッシュボードを活用して見ていきましょう。こちらの2015年から2025年のデータは、目安として夏スケジュールのみを見ており、1週間あたりの便数で表示されております(週7便で一日1便のイメージ)。ここでは米国本土のみならず、ハワイ州やグアム、サイパンも含まれていることに留意してください。
全体の傾向として、初めの2015年をピークにわずかに下落傾向であることがわかります。また2020年から新型コロナ(COVID-19パンデミック)の影響で大きく下がりましたが、2023年以降大きく回復を見せております。しかし、まだ便数ベースではコロナ直前の2019年夏の水準には回復しきれていません。他の地域に比べて回復が立ち遅れております。

1.エアライン別の傾向
エアライン別にみていくと、当該期間の総計便数が多い順に、ユナイテッド航空、日本航空、全日空、デルタ航空、アメリカン航空、ハワイアン航空、ZIPAIR、シンガポール航空、大韓航空、ティーウェイ航空、エアージャパン、エアアジアX、スクート航空、アシアナ航空となっております。その中でも、特に便数が多いプレイヤーはユナイテッド航空、日本航空、全日空、デルタ航空、アメリカン航空となっております。
まず顕著に変化が大きいのはデルタ航空で、この10年間で大きく便数を減らしていることがわかります(156便/週→42便/週)。これはデルタ航空(合併したノースウエスト航空を含む)がこれまで成田空港をハブ空港として活用し、アジア主要都市へと直行便を運航していたものが、羽田空港の再国際化と米国向け発着枠の拡大で羽田に移転し、東京(成田・羽田)のハブ運用を停止したことが大きいと考えられます。特にグアムやサイパンにも多く運航していたデルタ航空ですが、両島への運航から撤退してしまいました。また、名古屋からの運航も撤退し、日本からの運航を縮小しており、同じスカイチームメンバーで共同事業を行っている大韓航空のハブ空港である仁川を東アジア地域の拠点としてネットワークを構築しております。
一方で、日系エアラインの日本航空とANAは2015年からコロナを除いてほとんど変わっておらず、現状維持が続いております。その中でも、日本航空傘下のZIPAIRがパンデミック明けの2023年から本格的に太平洋路線に参入しており、今後も成田を拠点に米国へ拡大していくことが期待されます。
ユナイテッド航空およびアメリカン航空は、コロナ前後でほぼ同規模を維持しております。それぞれANAおよび日本航空とパートナーを組み、提携して共同事業を行えていることが大きいでしょう。東京圏に関して両社とも羽田への移転が米国発着枠が拡大したことで進んでおりますが、一部成田空港への運航も継続しており、それぞれ日系パートナーエアラインのネットワークを活用して、成田経由のアジア都市への際際接続需要を狙っていることが伺えます。なお、米国路線の便数トップは2025年夏時点でユナイテッド航空の週124便となっております。
またハワイアン航空が便数を増やしつつあり、他社が撤退した福岡や新千歳からも同期間で運航を行っております。今後は合併したアラスカ航空と共同でシアトル~成田便を運航するなど、拡大が期待されます。
過去10年の便数シェアは日系が49%、外資(シンガポール航空を除いて米系)が51%とほぼ拮抗しており、かつて日米航空協定で日本側が問題視した不均衡さはほぼ完全に是正された状況にあります。

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