米国路線推移(後編)

航空輸送分析

米国路線(前編)から続きます。

2.アライアンス別の傾向

 2015年夏時点と2025年夏時点のアライアンス別の構成比は下記の通りです。まず目に付くのは、主にデルタ航空からなるスカイチームの比率が激減していることです。前述の通り、デルタ航空が日本市場を縮小して、同じくスカイチームの大韓航空がいるソウルに注力していることが影響しております。それを補う形でスターアライアンス(ANAとユナイテッド航空)とワンワールド(日本航空とアメリカン航空)が拡大していることがわかります。

3.路線別傾向

 2025年時点のTOP10の路線は次の通りです。

 まずホノルルやグアムなどリゾートエリアが多いことがわかります。しかしコロナ後は便数を減らしており、回復が遅いことがわかります。これらリゾート地は日本人需要がほとんどであることから、円安と物価高で旅行控えによる影響が大きく出ていると考えられます。なおホノルルに関しては、ANAが2023年から超大型機のA380を定期便として投入しており、1機あたりの座席供給量が増加している影響も考えられます。

 次に米国本土便についてですが、リゾート便に比較して回復が早く、既にコロナ前を上回っている路線も見受けられます。本土では地理的に近い西海岸都市の便数が上位を占めてます。特にロサンゼルス、サンフランシスコは便数が多いうえ、既にコロナ前を超えた便数になっております。国際的にも主要都市であるニューヨーク、シカゴ、ワシントンDCそして米系エアラインがハブ機能を置くダラス、ヒューストン、デトロイトが続いております。デトロイトはデルタ航空の主要ハブ空港で、以前は成田のみならず関空、中部もありましたが、現在は羽田に集約してしまいました。本データの範囲外になりますが、2010年代前半はボストンやサンディエゴ、サンノゼ、デンバーなど新しい路線就航が相次ぎました。近年は既存主要空港への新規乗り入れによる増便が増える傾向が見られます。一方で伝統的な路線であるポートランド便は事実上消滅してしまう予定です。

 日米路線は首都圏空港に大きく偏っていることがわかります。特に米国本土便は、首都圏に集中しており、関西や中部からの運航はごくわずか、中部に関してはデトロイト便が休止したことで現在ゼロ。しかしインバウンド需要が伸びていることから、関西に関しては今後拡大が期待されます。そのほかホノルルやグアムといった米国リゾート地からの運航が地方路線にも行われています。

 米国便のほとんどが集中している首都圏ですが、元々はすべての首都圏からの米国行き定期便は成田空港に集中しておりました。羽田空港にD滑走路ができたことで本格的に再国際化を果たしました。それに合わせて複数回にわたる日米航空協議を経て、2010年には8枠/日(深夜早朝帯のみ)、2016年には10枠/日(深夜日中合わせて)に、2020年に東京オリンピックに合わせて24枠/日(週168便相当)にと、段階的に大幅拡大していきました。その結果、成田空港の米国行きの便が羽田に移るケースが多くみられ、これまで成田に集中していたのが急減することになりました。これは日米エアラインに共通で、2015年には成田空港に380便/週あったものが、2025年には190便/週にまで激減することになりました。特に成田から米国およびアジア主要都市へ運航していたデルタ航空は完全撤退し、羽田に移行したものの便数は1/3以下と大きく減らすことになりました(同期間156便/週→42便/週)。一方で完全に成田からの米国便が地盤沈下したわけではなく、羽田の拡大の同時期に成田からサンディエゴ、サンノゼ、デンバー、ボストンなどの新規路線が開設されたり、LCCのZIPAIRが拠点を置いたりして、羽田より余裕が出来た成田の発着枠を活用して新しい需要を開拓する機能を果たしつつあります。

4.オープンスカイの影響とLCC

 日本は米国と2010年に日本とは初となる航空自由化協定(オープンスカイ協定)を締結しており、これまでの二国間協定の枠組みを離れ、相互の航空会社の乗り入れが自由化されました。これまで発着回数が制限されていた成田空港は自由に発着できるようになったほか、同時に羽田空港の米国向け発着枠が開設されました(羽田空港第四滑走路の完成による)。また新しい路線も容易に開設できるようになり、日米間の供給増にポジティブな影響が表れております。

日米間のオープンスカイ協定の締結は、LCCであるZIPAIRの新規参入を容易にしたと考えられます。また第三国エアラインであるエアアジアXも、以遠権を活用し関西空港からホノルルに就航することになりました。今後もLCC便の増加が想定されます。

Sean

海外で航空輸送のデータ分析業務に関わる筆者が、気のままに航空輸送に関する情報を提供します。

航空業界を目指す就活生、航空株を検討する投資家、航空業界関係者、航空ファン、その他航空輸送に興味ある方々の参考になれば大変幸いです。

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