カナダ路線推移

航空輸送分析

 カナダの人口は4千万人程度と国土面積の割には少ないものの、特に地理的に近いバンクーバーを中心に、日カ両国間で人口規模にしては多くの便数が結ばれております。CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)の締結で、両国間の経済的、政治的な結びつきも強化されつつあるカナダに今回は注目して、日本・国際線就航状況(夏季スケ)ダッシュボードを活用して見ていきましょう。

 カナダ就航都市は、地理的に日本に近く西海岸寄りのバンクーバー及びカルガリーと、カナダ東部でNYなどにも比較的近く地理的には日本から離れているトロント及びモントリオールで分かれております。すでに2020年から新型コロナ(COVID-19パンデミック)前の便数を上回って回復・成長しており、同じ太平洋路線でも前回の米国路線と比較して回復が早かったことが伺えます。

1.エアライン別の傾向

  日カナダ両国間の運航エアラインは、カナダ側ではエアカナダとウエストジェット航空、日本側ではANA、日本航空、ZIPAIRの計5社となっております。日系の比率は33%で、カナダ系の比率は66%となっており、カナダ系のほうが便数は多い状況です。
 カナダ路線はカナダのフラッグキャリアのエアカナダが大きなシェアを占めており、この10年間で約6割を占めております。エアカナダは2025年時点ではカルガリーを除くすべての主要都市からまんべんなく日本へ運航しており、2019年以前はカルガリーからも運航されておりました。エアカナダは現在バンクーバー、トロント、モントリオールを国際的なハブ空港としており、それに応じる形となっております。米国エアラインは、多くを成田から羽田に移管しているのに対して、エアカナダは現時点では成田の比率が高く、成田をアジア路線の拠点空港としているように見受けられます。なおこれまで日本は首都圏に集中していたのに対して、近年は大阪便を開設しており、2025年時点ではバンクーバー便を、そしてデータには無いですがトロント便も開設しました。更に、新千歳や中部への乗り入れも検討しており、同社は積極的に日本路線を拡大していることが伺えます。
 カナダからのエアラインは長らくエアカナダ1社のみでしたが、2024年より新たにウエストジェット航空が参入しました。同社はカルガリーのハブ空港から成田に就航しております。これまで北米線がだけでありましたが、近年は長距離機材の787を導入して長距離国際線を拡充しつつあり、成田路線は同社にとって初の太平洋路線となりました。
 日系FSCエアラインは過去10年でそれぞれ18%程度の便数シェアで拮抗しており、同じく首都圏からバンクーバーを結ぶのみにとどまっております。違いはANAは羽田から運航する一方、JALは成田から運航しております。加えて、JAL傘下のZIPAIRが新しく、2024年から成田~バンクーバー便を運航を開始しました。

2.アライアンス別の傾向

 2025年夏時点のアライアンス別の構成比は下記の通りです。カナダのフラッグキャリアのエアカナダとANAが所属するスターアライアンスが圧倒的で7割程度を占めております。残りは日本航空のワンワールドの1割となっております。ウエストジェットは無所属ですが、スカイチームに所属するデルタ航空及び大韓航空が同社に出資したことが報道されました。今後、同社の動向が気になるところです。

3.路線別に傾向

 路線別では2025年時点で、まずはウエストジェット航空以外の全ての航空会社が就航しているバンクーバー路線が過半数を占めており、両国間のゲートウェイ都市となっていることがわかります。続いて、トロントが25%を占めております。残りはモントリオールとカルガリーがそれぞれ1割程度を占めております。

 日本の空港では米国便と違い、2025年時点でも成田が大きなシェアを占めており、7割弱となっております。羽田発着枠は両国エアラインがそれぞれ1日1便ずつ認められているだけとなっております。首都圏空港以外では、関西空港がバンクーバー便とここには記載が無いものの、トロント便も運航をする予定で、前述の通り更に中部や新千歳など地方主要空港の拡大も見込まれます。

4.オープンスカイの影響とLCC

 日本はカナダと2011年に日本とは初となる航空自由化協定(オープンスカイ協定)を締結しており、これまでの二国間協定の枠組みを離れ、相互の航空会社の乗り入れが自由化されました。これまで発着回数が制限されていた成田空港は自由に発着できるようになったほか、同時に羽田空港のカナダ向け発着枠が開設されました(羽田空港第四滑走路の完成による)。また新しい路線も容易に開設できるようになり、モントリオール便の就航などポジティブな影響が現れております。

 日カ間のオープンスカイ協定の締結は、LCCであるZIPAIRのバンクーバー便新規参入を容易にしたと考えられます。今後もカナダ東部へのLCC便の就航が期待されます。

Sean

海外で航空輸送のデータ分析業務に関わる筆者が、気のままに航空輸送に関する情報を提供します。

航空業界を目指す就活生、航空株を検討する投資家、航空業界関係者、航空ファン、その他航空輸送に興味ある方々の参考になれば大変幸いです。

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